3. distutils による C および C++ 拡張モジュールのビルド

Python 1.4 になってから、動的にリンクされるような拡張モジュール をビルドするためのメイクファイルを作成するような、特殊なメイクファイル をUnix 向けに提供するようになりました。Python 2.0 からは この機構 (いわゆる Makefile.pre.in および Setup ファイルの関係ファイル) はサポートされなくなりました。インタプリタ自体のカスタマイズは ほとんど使われず、 distutils で拡張モジュールをビルドできる ようになったからです。

distutils を使った拡張モジュールのビルドには、ビルドを行う計算機上に distutils をインストールしていることが必要です。 Python 2.x には distutils が入っており、 Python 1.5 用には個別の パッケージがあります。distutils はバイナリパッケージの作成も サポートしているので、ユーザが拡張モジュールをインストールする 際に、必ずしもコンパイラが必要というわけではありません。

distutils ベースのパッケージには、駆動スクリプト (driver script) となる setup.py が入っています。 setup.py は普通の Python プログラムファイルで、ほとんどの場合 以下のような見かけになっています:

from distutils.core import setup, Extension

module1 = Extension('demo',
                    sources = ['demo.c'])

setup (name = 'PackageName',
       version = '1.0',
       description = 'This is a demo package',
       ext_modules = [module1])

この setup.py とファイル demo.c があるとき、以下の コマンド

python setup.py build

を実行すると、demo.c をコンパイルして、"demo" という名前の 拡張モジュールをbuild ディレクトリ内に生成します。 システムによってはモジュールファイルは build/lib.system サブディレクトリに生成され、demo.sodemo.pyd といった名前になることがあります。

setup.py 内では、コマンドの実行はすべて "setup" 関数を 呼び出して行います。この関数は可変個のキーワード引数をとります。 例ではその一部を使っているにすぎません。 もっと具体的にいうと、例の中ではパッケージをビルドするための メタ情報と、パッケージの内容を指定しています。 通常、パッケージには Python ソースモジュールやドキュメント、 サブパッケージ等といった別のファイルも入ります。 distutils の機能に関する詳細は、 Python モジュールの配布 に書かれている distutils のドキュメントを参照してください; この節では、拡張モジュールのビルドについてのみ説明します。

駆動スクリプトをよりよく構成するために、決め打ちの引数を setup に入れておくことがよくあります。 上の例では、setup の "ext_modules" は 拡張モジュールのリストで、リストの各々の要素は Extension クラスのインスタンスになっています。 上の例では、"demo" という名の拡張モジュールを定義していて、単一の ソースファイルdemo.c をコンパイルしてビルドするよう定義しています。

多くの場合、拡張モジュールのビルドはもっと複雑になります。 というのは、プリプロセッサ定義やライブラリの追加指定が必要に なることがあるからです。例えば以下のファイルがその実例です。

from distutils.core import setup, Extension

module1 = Extension('demo',
                    define_macros = [('MAJOR_VERSION', '1'),
                                     ('MINOR_VERSION', '0')],
                    include_dirs = ['/usr/local/include'],
                    libraries = ['tcl83'],
                    library_dirs = ['/usr/local/lib'],
                    sources = ['demo.c'])

setup (name = 'PackageName',
       version = '1.0',
       description = 'This is a demo package',
       author = 'Martin v. Loewis',
       author_email = 'martin@v.loewis.de',
       url = 'http://www.python.org/doc/current/ext/building.html',
       long_description = '''
This is really just a demo package.
''',
       ext_modules = [module1])

この例では、setup は追加のメタ情報と共に呼び出されます。 配布パッケージを構築する際には、メタ情報の追加が推奨されています。 拡張モジュール自体については、プリプロセッサ定義、インクルードファイルの ディレクトリ、ライブラリのディレクトリ、ライブラリといった指定が あります。 distutils はこの情報をコンパイラに応じて異なるやり方で引渡します。 例えば、Unix では、上の設定は以下のようなコンパイルコマンドに なるかもしれません:

gcc -DNDEBUG -g -O3 -Wall -Wstrict-prototypes -fPIC -DMAJOR_VERSION=1 -DMINOR_VERSION=0 -I/usr/local/include -I/usr/local/include/python2.2 -c demo.c -o build/temp.linux-i686-2.2/demo.o

gcc -shared build/temp.linux-i686-2.2/demo.o -L/usr/local/lib -ltcl83 -o build/lib.linux-i686-2.2/demo.so

これらのコマンドラインは実演目的で書かれたものです; distutils の ユーザは distutils が正しくコマンドを実行すると信用してください。



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