30.10.1 Pythonバイトコード命令
現在Pythonコンパイラは次のバイトコード命令を生成します。
- STOP_CODE
-
コンパイラにend-of-code(コードの終わり)を知らせます。インタプリタでは使われません。
- NOP
-
なにもしないコード。バイトコードオプティマイザでプレースホルダとして使われます。
Do nothing code. Used as a placeholder by the bytecode optimizer.
- POP_TOP
-
top-of-stack (TOS)(スタックの先頭)の項目を取り除きます。
- ROT_TWO
-
スタックの先頭から二つの項目を入れ替えます。
- ROT_THREE
-
スタックの二番目と三番目の項目の位置を一つ上げ、先頭を三番目へ下げます。
- ROT_FOUR
-
スタックの二番目、三番目および四番目の位置を一つ上げ、先頭を四番目に下げます。
- DUP_TOP
-
スタックの先頭に参照の複製を作ります。
一項演算はスタックの先頭を取り出して演算を適用し、結果をスタックへプッシュし戻します。
- UNARY_POSITIVE
-
TOS = +TOS
を実行します。
- UNARY_NEGATIVE
-
TOS = -TOS
を実行します。
- UNARY_NOT
-
TOS = not TOS
を実行します。
- UNARY_CONVERT
-
TOS = `TOS`
を実行します。
- UNARY_INVERT
-
TOS = ~TOS
を実行します。
- GET_ITER
-
TOS = iter(TOS)
を実行します。
二項演算はスタックからスタックの先頭(TOS)と先頭から二番目のスタック項目を取り除きます。演算を実行し、スタックへ結果をプッシュし戻します。
- BINARY_POWER
-
TOS = TOS1 ** TOS
を実行します。
- BINARY_MULTIPLY
-
TOS = TOS1 * TOS
を実行します。
- BINARY_DIVIDE
-
from __future__ import division
が有効でないとき、TOS = TOS1 / TOS
を実行します。
- BINARY_FLOOR_DIVIDE
-
TOS = TOS1 // TOS
を実行します。
- BINARY_TRUE_DIVIDE
-
from __future__ import division
が有効でないとき、TOS = TOS1 / TOS
を実行します。
- BINARY_MODULO
-
TOS = TOS1 % TOS
を実行します。
- BINARY_ADD
-
TOS = TOS1 + TOS
を実行します。
- BINARY_SUBTRACT
-
TOS = TOS1 - TOS
を実行します。
- BINARY_SUBSCR
-
TOS = TOS1[TOS]
を実行します。
- BINARY_LSHIFT
-
TOS = TOS1 <
< TOS
を実行します。
- BINARY_RSHIFT
-
TOS = TOS1 >
> TOS
を実行します。
- BINARY_AND
-
TOS = TOS1 & TOS
を実行します。
- BINARY_XOR
-
TOS = TOS1 ^ TOS
を実行します。
- BINARY_OR
-
TOS = TOS1 | TOS
を実行します。
インプレース演算はTOSとTOS1を取り除いて結果をスタックへプッシュするという点で二項演算と似ています。しかし、TOS1がインプレース演算をサポートしている場合には演算が直接TOS1に行われます。また、演算結果のTOSは元のTOS1と同じオブジェクトになることが多いですが、常に同じというわけではありません。
- INPLACE_POWER
-
インプレースに
TOS = TOS1 ** TOS
を実行します。
- INPLACE_MULTIPLY
-
インプレースに
TOS = TOS1 * TOS
を実行します。
- INPLACE_DIVIDE
-
from __future__ import division
が有効でないとき、インプレースにTOS = TOS1 / TOS
を実行します。
- INPLACE_FLOOR_DIVIDE
-
インプレースに
TOS = TOS1 // TOS
を実行します。
- INPLACE_TRUE_DIVIDE
-
from __future__ import division
が有効でないとき、インプレースにTOS = TOS1 / TOS
を実行します。
- INPLACE_MODULO
-
インプレースに
TOS = TOS1 % TOS
を実行します。
- INPLACE_ADD
-
インプレースに
TOS = TOS1 + TOS
を実行します。
- INPLACE_SUBTRACT
-
インプレースに
TOS = TOS1 - TOS
を実行します。
- INPLACE_LSHIFT
-
インプレースに
TOS = TOS1 <
< TOS
を実行します。
- INPLACE_RSHIFT
-
インプレースに
TOS = TOS1 >
> TOS
を実行します。
- INPLACE_AND
-
インプレースに
TOS = TOS1 & TOS
を実行します。
- INPLACE_XOR
-
インプレースに
TOS = TOS1 ^ TOS
を実行します。
- INPLACE_OR
-
インプレースに
TOS = TOS1 | TOS
を実行します。
スライス演算は三つまでのパラメータを取ります。
- SLICE+0
-
TOS = TOS[:]
を実行します。
- SLICE+1
-
TOS = TOS1[TOS:]
を実行します。
- SLICE+2
-
TOS = TOS1[:TOS]
を実行します。
- SLICE+3
-
TOS = TOS2[TOS1:TOS]
を実行します。
スライス代入はさらに別のパラメータを必要とします。どんな文もそうであるように、スタックに何もプッシュしません。
- STORE_SLICE+0
-
TOS[:] = TOS1
を実行します。
- STORE_SLICE+1
-
TOS1[TOS:] = TOS2
を実行します。
- STORE_SLICE+2
-
TOS1[:TOS] = TOS2
を実行します。
- STORE_SLICE+3
-
TOS2[TOS1:TOS] = TOS3
を実行します。
- DELETE_SLICE+0
-
del TOS[:]
を実行します。
- DELETE_SLICE+1
-
del TOS1[TOS:]
を実行します。
- DELETE_SLICE+2
-
del TOS1[:TOS]
を実行します。
- DELETE_SLICE+3
-
del TOS2[TOS1:TOS]
を実行します。
- STORE_SUBSCR
-
TOS1[TOS] = TOS2
を実行します。
- DELETE_SUBSCR
-
del TOS1[TOS]
を実行します。
その他の演算。
- PRINT_EXPR
-
対話モードのための式文を実行します。TOSはスタックから取り除かれプリントされます。非対話モードにおいては、式文は
POP_STACK
で終了しています。
- PRINT_ITEM
-
sys.stdout
に束縛されたファイル互換のオブジェクトへTOSをプリントします。print文に、各項目に対するこのような命令が一つあります。
- PRINT_ITEM_TO
-
PRINT_ITEM
と似ていますが、TOSから二番目の項目をTOSにあるファイル互換オブジェクトへプリントします。これは拡張print文で使われます。
- PRINT_NEWLINE
-
sys.stdout
へ改行をプリントします。これはprint文がコンマで終わっていない場合にprint文の最後の演算として生成されます。
- PRINT_NEWLINE_TO
-
PRINT_NEWLINE
と似ていますが、TOSのファイル互換オブジェクトに改行をプリントします。これは拡張print文で使われます。
- BREAK_LOOP
-
break文があるためループを終了します。
- CONTINUE_LOOP target
-
continue文があるためループを継続します。targetはジャンプするアドレスです(アドレスは
FOR_ITER
命令であるべきです)。
- LIST_APPEND
-
list.append(TOS1, TOS)
を呼びます。 リスト内包表記を実装するために使われます。
- LOAD_LOCALS
-
現在のスコープのローカルな名前空間(locals)への参照をスタックにプッシュします。これはクラス定義のためのコードで使われます: クラス本体が評価された後、localsはクラス定義へ渡されます。
- RETURN_VALUE
-
関数の呼び出し元へTOSを返します。
- YIELD_VALUE
-
TOS
をポップし、それをジェネレータからyieldします。
- IMPORT_STAR
-
"_"で始まっていないすべてのシンボルをモジュールTOSから直接ローカル名前空間へロードします。モジュールはすべての名前をロードした後にポップされます。この演算コードは
from module import *
を実行します。
- EXEC_STMT
-
exec TOS2,TOS1,TOS
を実行します。コンパイラは見つからないオプションのパラメータをNone
で埋めます。
- POP_BLOCK
-
ブロックスタックからブロックを一つ取り除きます。フレームごとにブロックのスタックがあり、ネストしたループ、try文などを意味しています。
- END_FINALLY
-
finally節を終わらせます。インタプリタは例外を再び発生させなければならないかどうか、あるいは、関数が返り外側の次のブロックに続くかどうかを思い出します。
- BUILD_CLASS
-
新しいクラスオブジェクトを作成します。TOSはメソッド辞書、TOS1は基底クラスの名前のタプル、TOS2はクラス名です。
次の演算コードはすべて引数を要求します。引数はより重要なバイトを下位にもつ2バイトです。
- STORE_NAME namei
-
name = TOS
を実行します。nameiはコードオブジェクトの属性co_namesにおけるnameのインデックスです。コンパイラは可能ならばSTORE_LOCAL
またはSTORE_GLOBAL
を使おうとします。
- DELETE_NAME namei
-
del name
を実行します。ここで、nameiはコードオブジェクトのco_names属性へのインデックスです。
- UNPACK_SEQUENCE count
-
TOSをcount個のへ個別の値に分け、右から左にスタックに置かれます。
- DUP_TOPX count
-
count個の項目を同じ順番を保ちながら複製します。実装上の制限から、countは1から5の間(5を含む)でなければいけません。
- STORE_ATTR namei
-
TOS.name = TOS1
を実行します。ここで、nameiはco_namesにおける名前のインデックスです。
- DELETE_ATTR namei
-
co_namesへのインデックスとしてnameiを使い、
del TOS.name
を実行します。
- STORE_GLOBAL namei
-
STORE_NAME
として機能しますが、グローバルとして名前を記憶します。
- DELETE_GLOBAL namei
-
DELETE_NAME
として機能しますが、グルーバル名を削除します。
- LOAD_CONST consti
-
"co_consts[consti]"をスタックにプッシュします。
- LOAD_NAME namei
-
"co_names[namei]"に関連付けられた値をスタックにプッシュします。
- BUILD_TUPLE count
-
スタックからcount個の項目を消費するタプルを作り出し、できたタプルをスタックにプッシュします。
- BUILD_LIST count
-
BUILD_TUPLE
として機能しますが、リストを作り出します。
- BUILD_MAP zero
-
スタックに新しい空の辞書オブジェクトをプッシュします。引数は無視され、コンパイラによってゼロに設定されます。
- LOAD_ATTR namei
-
TOSを
getattr(TOS, co_names[namei])
と入れ替えます。
- COMPARE_OP opname
-
ブール演算を実行します。演算名は
cmp_op[opname]
にあります。
- IMPORT_NAME namei
-
モジュール
co_names[namei]
をインポートします。モジュールオブジェクトはスタックへプッシュされます。現在の名前空間は影響されません: 適切なimport文に対して、それに続くSTORE_FAST
命令が名前空間を変更します。
- IMPORT_FROM namei
-
属性
co_names[namei]
をTOSに見つかるモジュールからロードします。作成されたオブジェクトはスタックにプッシュされ、その後STORE_FAST
命令によって記憶されます。
- JUMP_FORWARD delta
-
バイトコードカウンタをdeltaだけ増加させます。
- JUMP_IF_TRUE delta
-
TOSが真ならば、deltaだけバイトコードカウンタを増加させます。TOSはスタックに残されます。
- JUMP_IF_FALSE delta
-
TOSが偽ならば、deltaだけバイトコードカウンタを増加させます。TOSは変更されません。
- JUMP_ABSOLUTE target
-
バイトコードカウンタをtargetに設定します。
- FOR_ITER delta
-
TOS
はイテレータです。そのnext()メソッドを呼び出します。これが新しい値を作り出すならば、それを(その下にイテレータを残したまま)スタックにプッシュします。イテレータが尽きたことを示した場合は、TOS
がポップされます。そして、バイトコードカウンタがdeltaだけ増やされます。
- LOAD_GLOBAL namei
-
グルーバル名
co_names[namei]
をスタック上にロードします。
- SETUP_LOOP delta
-
ブロックスタックにループのためのブロックをプッシュします。ブロックは現在の命令からdeltaバイトの大きさを占めます。
- SETUP_EXCEPT delta
-
try-except節からtryブロックをブロックスタックにプッシュします。deltaは最初のexceptブロックを指します。
- SETUP_FINALLY delta
-
try-except節からtryブロックをブロックスタックにプッシュします。deltaはfinallyブロックを指します。
- LOAD_FAST var_num
-
ローカルな
co_varnames[var_num]
への参照をスタックにプッシュします。
- STORE_FAST var_num
-
TOSをローカルな
co_varnames[var_num]
の中に保存します。
- DELETE_FAST var_num
-
ローカルな
co_varnames[var_num]
を削除します。
- LOAD_CLOSURE i
-
セルと自由変数記憶領域のスロットiに含まれるセルへの参照をプッシュします。iがco_cellvarsの長さより小さければ、変数の名前は
co_cellvars[i]
です。そうでなければ、それはco_freevars[i - len(co_cellvars)]
です。
- LOAD_DEREF i
-
セルと自由変数記憶領域のスロットiに含まれるセルをロードします。セルが持つオブジェクトへの参照をスタックにプッシュします。
- STORE_DEREF i
-
セルと自由変数記憶領域のスロットiに含まれるセルへTOSを保存します。
- SET_LINENO lineno
-
このペコードは廃止されました。
- RAISE_VARARGS argc
-
例外を発生させます。argcはraise文へ与えるパラメータの数を0から3の範囲で示します。ハンドラはTOS2としてトレースバック、TOS1としてパラメータ、そしてTOSとして例外を見つけられます。
- CALL_FUNCTION argc
-
関数を呼び出します。argcの低位バイトは位置パラメータを示し、高位バイトはキーワードパラメータの数を示します。オペコードは最初にキーワードパラメータをスタック上に見つけます。それぞれのキーワード引数に対して、その値はキーの上にあります。スタック上のキーワードパラメータの下に位置パラメータはあり、先頭に最も右のパラメータがあります。スタック上のパラメータの下には、呼び出す関数オブジェクトがあります。
- MAKE_FUNCTION argc
-
新しい関数オブジェクトをスタックにプッシュします。TOSは関数に関連付けられたコードです。関数オブジェクトはTOSの下にあるargcデフォルトパラメータをもつように定義されます。
- MAKE_CLOSURE argc
-
新しい関数オブジェクトを作り出し、そのfunc_closureスロットを設定し、それをスタックにプッシュします。TOSは関数に関連付けられたコードです。コードオブジェクトがN個の自由変数を持っているならば、スタック上の次のN個の項目はこれらの変数に対するセルです。関数はセルの前にあるargcデフォルトパラメータも持っています。
- BUILD_SLICE argc
-
スライスオブジェクトをスタックにプッシュします。argcは2あるいは3でなければなりません。2ならば
slice(TOS1, TOS)
がプッシュされます。3ならばslice(TOS2, TOS1, TOS)
がプッシュされます。これ以上の情報については、slice()
組み込み関数を参照してください。
- EXTENDED_ARG ext
-
大きすぎてデフォルトの二バイトに当てはめることができない引数をもつあらゆるオペコードの前に置かれます。extは二つの追加バイトを保持し、その後ろのオペコードの引数と一緒になって取られます。それらは四バイト引数を構成し、extはその最上位バイトです。
- CALL_FUNCTION_VAR argc
-
関数を呼び出します。argcは
CALL_FUNCTION
のように解釈実行されます。スタックの先頭の要素は変数引数リストを含んでおり、その後にキーワードと位置引数が続きます。
- CALL_FUNCTION_KW argc
-
関数を呼び出します。argcは
CALL_FUNCTION
のように解釈実行されます。スタックの先頭の要素はキーワード引数辞書を含んでおり、その後に明示的なキーワードと位置引数が続きます。
- CALL_FUNCTION_VAR_KW argc
-
関数を呼び出します。argcは
CALL_FUNCTION
のように解釈実行されます。スタックの先頭の要素はキーワード引数辞書を含んでおり、その後に変数引数のタプルが続き、さらに明示的なキーワードと位置引数が続きます。
- HAVE_ARGUMENT
-
これはオペコードではありません。引数をとらないオペコード
< HAVE_ARGUMENT
と、
とるオペコード >= HAVE_ARGUMENT
を分割する行です。
リリース 2.5 ,19th September, 2006 更新
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