6.2 cmath -- 複素数のための数学関数

このモジュールは常に利用できます。このモジュールでは、 複素数を扱う数学関数へのアクセス手段を提供しています。

提供している関数を以下に示します:

acos( x)
x の逆余弦 (arc cosine) を返します。 この関数には二つの branch cut があります: 一つは 1 から右側に実数軸に沿って ∞へと延びていて、 下から連続しています。 もう一つは -1 から左側に実数軸に沿って -∞へと延びていて、 上から連続しています。

acosh( x)
x の逆双曲線余弦を返します。 branch cut が一つあり、1 の左側に実数軸に沿って -∞へと 延びていて、上から連続しています。

asin( x)
x の逆正弦を返します。 acos() と同じ branch cut を持ちます。

asinh( x)
x の双曲線正弦を返します。 2 つの brnch cut があり、±1j の左から ±-∞j に延びており、両方とも上で連続しています。 これらの branch cut は将来のリリースで修正されるべきバグとみなされて います。 正しい branch cut は虚数軸に沿って延びており、一つは 1j から ∞j までで右から連続、もう一方は -1j から下って -∞j までで、左から連続です。

atan( x)
x の逆正接を返します。 2 つの branch cut があります: 一つは 1j から虚数軸に沿って ∞j へと延びており、 左で連続です。もう一方は -1j から虚数軸に沿って -∞j までで、左で連続です。 (この仕様は上の branch cut が反対側から連続になるように変更されるかも しれません)。

atanh( x)
x の逆双曲線正接を返します。 2 つの branch cut があります: 一つは 1 から実数軸に沿って ∞までで、上で連続です。 もう一方は -1 から実数軸に沿って -∞までで、 上で連続です。 (この仕様は左側の branch cut が反対側から連続になるように変更されるかも しれません)。

cos( x)
x の余弦を返します。

cosh( x)
x の双曲線余弦を返します。

exp( x)
指数値 e**x を返します。

log( x[, base])
baseを底とするx の対数を返します。 もしbaseが指定されていない場合には、xの自然対数を返しま す。 branch cut を一つもち、0 から負の実数軸に沿って -∞に 延びており、上で連続しています。 バージョン 2.4 で 変更 された仕様: 引数base が追加されました。

log10( x)
x の底 10 対数を返します。 log() と同じbranch cut を持ちます。

sin( x)
x の正弦を返します。

sinh( x)
x の双曲線正弦を返します。

sqrt( x)
x の平方根を返します。 log() と同じ branch cut を持ちます。

tan( x)
x の正接を返します。

tanh( x)
x の双曲線正接を返します。

このモジュールではまた、以下の数学定数も定義しています:

pi
数学上の定数 pi で、実数です。

e
数学上の定数 e で、実数です。

math と同じような関数が選ばれて いますが、全く同じではないので注意してください。機能を二つの モジュールに分けているのは、複素数に興味がなかったり、もしかすると 複素数とは何かすら知らないようなユーザがいるからです。 そういった人たちはむしろ、math.sqrt(-1) が複素数を返すよりも 例外を送出してほしいと考えます。また、cmath で定義されている 関数は、たとえ結果が実数で表現可能な場合 (虚数部分がゼロの複素数) でも、 常に複素数を返すので注意してください。

branch cut に関する注釈: branch cut をもつ曲線上では、与えられた関数は 連続でありえなくなります。これらは多くの複素関数における必然的な 特性です。複素関数を計算する必要がある場合、これらの branch cut に 関して理解しているものと仮定しています。悟りに至るために何らかの (到底基礎的とはいえない) 複素数に関する書をひもといてください。 数値計算を目的とした branch cut の正しい選択方法についての情報としては、 以下がよい参考文献となります:

参考:

Kahan, W: Branch cuts for complex elementary functions; or, Much ado about nothings's sign bit. In Iserles, A., and Powell, M. (eds.), The state of the art in numerical analysis. Clarendon Press (1987) pp165-211.

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